EPISODE 12 ツーリストスタイル」


ツーリストスタイル。
12年前、初めて聞く単語だった。


ツーリストのスタイル
意味は解るが何をさしてそう言うのか。


バズは街に溢れるインディアンジュエリーやインディアンクラフトを指して言う。
『いいかこういうのはみんなツーリストスタイルって言うんだ。』
「?」
『解らないか? これがトラディショナルスタイル。
んで、こっちがツーリストスタイルだ。
ツーリストスタイルを見極めろ。
ほとんどのどれもがツーリストスタイルだ。
トラディショナルスタイルはわずかしかない。
ツーリストスタイルのものはトラディショナルじゃない。
ツーリストスタイルは観光客向け。
俺が作ってるのは違うんだぞ。
俺達の家族が作っているのはトラディショナルスタイル。
ツーリストスタイルは作らない。
解るか?
これを理解しないと始まらないな。
大事なことだ。』


バズは事あるごとにこんなふうにくどい程まくしたてた。
生き方はトラディショナルを辞めたわりに、
作っているジュエリーはトラディショナルと言い張る。


ツーリストスタイルとトラディショナルスタイル
この違いは少しずつ理解した。
12年たった今では完璧に理解して、
この両者の違いの大きさを実感し愕然とするまでに至っている。

ツーリストスタイルとトラディショナルスタイルは全然違ってた。
僕の個人的見解ではトラディショナルスタイルの工芸品は全体の30パーセントに満たないように思うし
さらに高級品となると5パーセントを割るだろう。
ある厳しい人の意見ではもっと少ないという見解も、
他人の商売の邪魔をしないよう、注意しながら解説を加えよう。

つづく


EPISODE 13 「ビバ ラズベガス」