EPISODE 14 「ビバ ラスベガス2」


夜中の山の中、ハイウェイを走って
スパイ族のリザべーションに着く頃にはすっかり出来上がってキマリきっていた。
ライブ会場(ただの体育館)に荷物を降ろしてセッティングする。
演奏はすでに始まっていて踊り狂うインディアン数人、
しかも、客はその数人だけ。
演奏は上手いけど曲はつまらないし、Tシャツは売れそうにないし、うろうろして時間を潰した。


何人のスパイ族にからまれたことか
『おい、おまえ、見かけない顔だな。どこの部族だ?』
「トウキョウから来てるんだよ」
『そいじゃ、あれか、あれ、ブルースリー知ってるか?』
「あぁ、そりゃ知ってるだろ。けどありゃホンコンだ。中国人系だよ。」
『違うのか? じゃ、トウキョウってのは中国のどのへんにあんだ?』 
ばかばかしいこの話題は一度や二度じゃない、
とうとう「放っといてくれ」という捨て台詞まで出る始末。
国定公園の森林の夜を気持ちよく過ごせるかと思えば、
散々な邪魔がはいって、車の中で寝て時間を潰すことにした。


ちなみにスパイ族はスパイではなくスゥパイ族
スゥ系パイ族で、スゥはラコタの英(仏)名であるスーではない。


夜中2時をまわる頃、ライブも終わり、Tシャツのブースをかたづけ、
ルート66をラフリンにむけて、
3バカを乗せたトラックは走り始めた。
途中、真暗な砂漠の交差点(?)にあるGS兼グローシーストアで買い物。
やけに派手な赤、青、ピンクといったネオンの色は昔、ルート66が使われていた時代を思わせる。
今では夜など滅多に車は通らないのに___。 
ノスタルジックな、アメリカの演歌(カントリーだな)が聴こえてきそうだ。
でもそんな気分に浸っていられるわけがない。
なにしろバズとライノ、強力なヘベレケコンビがくっついてるんだ。
背中で奇声が聞こえる。


その交差点(ジャンクション)でルート66を降り、
ニードルズを越えてラフリンに着く。
朝、出勤する車が多くなりはじめる頃、
俺たちはカジノの駐車場に逃げるように滑り込む。
3人とも寝てない顔をしていた。
眠らない街とはいえ早朝のカジノは人もまばらだ。
どろどろでスロットマシンにぶら下がる。
自分が出ているとすったバズかライノが近寄ってきて、
自分がするとバズかライノは出ている。
友だちとパチンコにいったとき誰でも経験あるだろう。
全員でやめるタイミングがいつまでもとれない。
そのうちバズが行方不明になって
俺もちょっと飽きて、ソファの影で一寝入り。
目が醒めてバズを探すと仮眠して元気を取り戻したバズがバカラに講じている。

つづく、


EPISODE 1「マンドー」